不朽の名作「ルパン三世カリオストロの城」の名台詞
「あなたの心です」。
テレビ放送などがある度に
実は隠された真相や元ネタがあると
話題になっています。
今回はこの名台詞を深掘りしたいと思います。
ネタバレを含みますので、本編ご鑑賞後の記事をご覧ください。
ルパン三世カリオストロの城「あなたの心です」の真相5つ
1つ目:ルパンらしくないと批判された
クライマックスの銭形とクラリスの会話。
くそぉ、一足遅かったか。ルパンめまんまと盗みおって!
と言う銭形に対し、
いいえ、あの方は何も盗らなかったわ。
わたくしの為に戦ってくださったんです。
と言うクラリス。
そこで銭形が、
いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。
あなたの心です。
と言うのでした。
このセリフにグッときた方は多いでしょう。
今でも何かと話題になる名台詞です。
シニカルなルパンらしくない
しかし当時このセリフには、
ルパンらしくないと
批判の声が上がったといいます。
シニカルな大泥棒であるルパンが
少女の心だけを盗むという
ロマンチックなラストに
当時は違和感を感じた方は多かったようです。
2つ目:敢えてルパンのキャラを変えた
宮崎監督はTV第1シリーズから途中参加し、
ハード・タッチの作風を、
低年齢層向けに変えたことは有名な話です。
映画「カリオストロの城」も
時代に合わせたキャラクターを
意識したと言われています。
コミカルなルパン像へのシフトチェンジ

https://www.cinematoday.jp/news/N0119980
「あれから4年…クラリス回想」の書籍の中で宮崎監督は、
あのころのハングリーなルパン、助平でケッペキで、
オッチョコチョイに思慮をかくし、ミニカーレースに夢中になれたルパンを、
ぼくはときどきなつかしく思い出す。
しかし、いまやらねばならぬことは、もっと他のことなのだ。
と語っています。
昔のハングリーなルパンは今の時代に受け入れられない、
それではどんなルパン像にすれば良いのか。
「ルパン三世 カリオストロの城 アニメコレクション」の中で、
宮崎駿監督はこのように語っていました。
・劇場版ルパンをオファーされた時「何で今さら?」と思った。
・60~70年代に生きてたルパンというキャラクターは今さら出てくるのには古すぎると思ったから。
・自分なりにルパン像を作らなければならない羽目になったとき、60~70年代頭に最も生き生きしていた男が、今「生き恥をさらして生きている」という風に構えるしか手がなかった
観客に受け入れられるためには、
原作のハングリーなルパンではもう古い。
生き恥をさらして生きているような
コミカルで陽気なルパンでいこう
となったのですね。
年齢も中年の設定に

https://www.cinematoday.jp/news/N0097730
さらに本作のルパンは年齢の設定も変えています。
・クラリスがルパンを「おじさま」と呼ぶ
・「もう10年以上昔だ」と若き時代の話をする
このように中年ルパンを印象付ける描写が見られます。
時代の流れに合わせる必要があるとは言え、
急にキャラを変えることは不自然ということで、
ハングリーな時代を経て丸くなったルパン
という流れにしたのではないでしょうか。
少女の心を盗むくらいしか残されていない

https://www.cinematoday.jp/news/N0097730
そんなルパンの象徴とも言えるのが、
「あなたの心です」シーンなのです。
さらに宮崎監督は「あれから4年…クラリス回想」の中で
現実の世界に取り残されたルパンに、いったい何ができるのだろう。
せいぜい少女の心を盗むくらいしか残されていない。
と語っています。
そう考えると、
あの名シーンはちょっぴり切ないものに感じますね。
3つ目:宮崎駿監督の苦悩が込められていた
宮崎駿著「出発点」にて宮崎監督は
ルパンのTV第1シリーズについて、
放映中の路線変更は製作を混乱させ、
テレビアニメーションの技法が停滞した時期もあって、
画面は乱れ、完成度は低く、技術的に見るところのない作品であった
と語っています。
時代に合った作品作りを余儀なくされることへの
苦悩が伺えますね。
ハード・タッチな作風を変えたことで、
ファミリー層へのアピールは成功したのかもしれません。
しかし原作ファンにとっては
物足りない内容になってしまったのかもしれませんね。
2度とできないと思った

https://www.waltdisneystudios.jp/studio/ghibli/0239
さらに宮崎駿著「出発点」では、
汚れきった中年のおじさんを使って、
新鮮なハッとする作品は作れないですよ。
こういうことは2度とできないなって、思ってやりました。
とも語っていました。
ルパンに対する絶望感のようなものが伝わってきますね。
「あなたの心です」の名台詞は
当時の宮崎監督の苦悩や絶望感が凝縮された
セリフとも言えるのではないでしょうか。
4つ目:名台詞として愛される理由

https://www.cinematoday.jp/news/N0119980
公開当時は、
ルパンらしくないと言われた
「あなたの心です」シーン。
それまでのシニカルなルパンではなく
陽気でコミカルなルパンにキャラ変したことを
象徴するセリフなので、
原作ファンから批判されたのも頷けます。
しかし今では、
テレビ放送されるたびに話題となる名台詞です。
その理由は2つあるでしょう。
多彩なルパンが誕生したから
「カリオストロの城」公開時は、
ルパンのキャラクターは固定されたものでした。
そのため、
映画版の新しいルパンのキャラに
抵抗を感じる方もいたのでしょう。
しかしその後、
さまざまなテイストを持つルパンが誕生し、
それぞれが魅力的なキャラとして愛されるようになりました。
そのような流れがあり、
「カリオストロの城」のルパンや、
それを象徴する「あなたの心です」シーンも
愛されるものになったのでしょう。
大人の心に染みるセリフだから

「あなたの心です」の名セリフは
原作のシニカルなルパンらしからぬ、
心温まるシーンです。
人生において、
若くやんちゃな時期は一時であり、
落ち着いて丸くなってからの人生のほうが長いもの。
だから丸くなったルパンの姿に哀愁と愛着を感じ、
何度でも観たくなるのでしょう。
本物の財宝や大金ではなく少女の心を盗むしかできない
時代に取り残されたおじさん。
そんなルパンを端的に表現したセリフだから、
名セリフとされているのかもしれませんね。
5つ目:元ネタがあった?
「あなたの心です」のセリフには
元ネタがあったと言われています。
それは、
三島由紀夫脚本、深作欣二監督の「黒蜥蜴」(1968年)という映画。
原作は江戸川乱歩です。
・美輪明宏さん演じる女盗賊の黒蜥蜴
・木村功さん演じる名探偵・明智小五郎
この二人が繰り広げるサスペンスありながら、
女盗賊と名探偵のロマンスも描かれています。
元ネタと言われたのがクライマックスシーンのセリフです。
毒薬を飲み干した黒蜥蜴は、
心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ。
あなたはとっくに盗んでいた
と言います。
すると明智が
僕にはわかったよ、君の心は本物の宝物、本物のダイヤだ、と
と言うと、
明智の胸の中で黒蜥蜴は息絶えるのでした。
名探偵明智は女泥棒黒蜥蜴の心を盗んだ
ということですね。
「あなたの心です」シーンと類似していると言えますね。
宮崎監督がこのシーンを意識したのか真相は謎ですが、
元ネタとなっている説が浮上するのも
納得できますね。




まとめ
今回は、
不朽の名作「ルパン三世カリオストロの城」の名台詞
「あなたの心です」について深掘りしてきました。
実は批判の声があったり、
宮崎監督の苦悩が詰まっているなど
興味深い説が多々あることがわかりました。
本作を観る時には、
ぜひこのラストのセリフに注目してくださいね。