宮崎駿監督の最高傑作ある「風の谷のナウシカ」。
さまざまなメッセージが込められている作品でもあります。
今回は本作が伝えたい7つのことを考察したいと思います。
【考察】風の谷のナウシカで伝えたいこと7つ
1つ目:核兵器根絶

https://www.ghibli.jp/works/nausicaa/
映画「風の谷のナウシカ」では、
巨神兵が世界を焼き尽くした「火の7日間」という戦争から
1000年後の世界が描かれます。
巨神兵による「火の七日間」が実行された理由は
明らかにされていません。
しかし巨神兵については、
・旧人類が作った「人工生命体」
・「破壊神」のような最終兵器
このようなことがわかっています。
「巨神兵=核兵器」説

さらに巨神兵は核兵器だという説が有力です。
巨神兵は核を動力とする人工生命体であり、
放射能のような光で世界を破壊していく
ということですね。
巨神兵を持っているトルメキア軍は核保有国。
「火の七日間」は核戦争ということになります。
「火の七日間」の後、
1000年経っても人類が普通に暮らせない状態の世界。
この恐ろしさを描くことで、
核兵器根絶のメッセージを
伝えたかったのではないでしょうか。
宮崎監督は「巨神兵=核兵器」を否定?

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ネット上では「巨神兵=核兵器」説が有力です。
しかし宮崎駿監督が
巨神兵について聞かれた時に、
巨神兵は巨神兵です
と答えたという情報もあります。
巨神兵の正体を知っているのは、
宮崎監督だけなのかもしれません。
2つ目:反戦

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「風の谷のナウシカ」はファンタジー作品ですが、
当時現実世界で起きていた
米ソ冷戦が影響していると思われます。
映画では、
大国トルメキアが、
・風の谷
・ペジテ市
などの小国に侵攻するという構図。
原作では、
トルメキアと土鬼諸侯連合の二大勢力の紛争に、
風の谷などの小国が巻き込まれるという構図になっています。
米ソ冷戦を彷彿とさせながら、
反戦を伝えようとしたのではないでしょうか。
ソ連崩壊=土鬼(ドルク)崩壊?

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宮崎監督は漫画版を掲載している時、
大国の土鬼(ドルク)帝国があっけなく崩壊させて良いのか
悩んだことがあったそうです。
しかしその後、
大国のソ連が崩壊し非常に驚いた
というエピソードがあります。
「風の谷のナウシカ」は、
米ソ冷戦の影響を受けた作品であることは
間違いないでしょう。
3つ目:環境問題
本作で重要な役割である「腐海」。
クリミア半島にある「シュワージュ(腐った海)」が由来です。
この「腐海」は、人間にとって有毒である瘴気を出す森として描かれます。
人間がこの森にマスクをせずに入ることはできません。
最近はこの描写が、
「マスク装着を余儀なくされたコロナ禍の世界を予告している」
と話題になったこともありました。
水俣病が関係していた

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腐海の描写は「水俣病問題」が関係していたといいます。
水俣病(みなまたびょう)とは、
熊本県水俣湾周辺の化学工場などから海や河川に排出されたメチル水銀化合物により汚染された海産物を、
住民が日常的に食べたことで水銀中毒が集団発生した公害病。
1953年~1960年にかけて発生し、
手足や口がしびれる症状が出て、死亡する人もいました。
1950年代~1960年代、
工業化の発展により人々の生活は飛躍的に豊かになりました。
しかし一方で工場等から排出された有害化学物質等による環境汚染により、
・水俣病(熊本県)
・イタイイタイ病(富山県)
・新潟水俣病(新潟県)
・四日市ぜんそく(三重県)
これらの四大公害と呼ばれる産業公害の深刻な問題となりました。
このような環境問題と向き合うことが、
本作に込められたメッセージなのでしょう。
4つ目:地球にとって有害なのは人間

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「開発・進歩」だと思われていたことが、
実は「破壊」であったことが明らかになった1950年代~1960年代の日本。
宮崎駿監督は本作を通して、
地球にとって有害なのは人間
という重いメッセージを伝えたかったのでしょう。
腐海は人間の過ちをリセットしていた

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人間にとって有害なガスを放出する腐海。
しかしこれは、
人間が汚染した大地を浄化するためのシステムであることが判明します。
つまり地球にとって有害なものは、
腐海でも蟲でもなく人類だったのです。
人間の開発し、進歩し続けることで、
地球を汚染、破壊し続けてしまうという
辛辣なメッセージが込められていると思われます。
5つ目:自然への敬意

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宮崎駿監督が本作を作るきっかけとなったという
水俣病の問題。
水銀に汚染された水俣湾は死の海となり漁民は漁をやめました。
その数年後、
水俣湾には大量の魚の群れがやってきて、
岩にはカキがたくさんついていたといいます。
その海中の泥を調べてみると、
独自に進化した水銀を浄化する能力をもった細菌が発見されたそうです。
自然のたくましさ

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この事実に衝撃を受けた宮崎監督は、
大地を浄化するシステムを持つ腐海
を思いついたそうです。
腐海、つまり自然は、
人間が勝手に汚染、破壊したものを浄化してくれている。
その健気さやたくましさに対し
敬意を持つことが大事だと伝えたかったのでしょう。
ナウシカは自然への敬意をもっていた

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地球上で人間だけが特別であり、
他の生物とは違うと切り離して考えがちです。
だから自己中心的に自然を破壊する行為に及んでしまうのかもしれません。
そうではなく、
人間も地球上を構成する生命体の一つだと理解することが大事。
このように考え自然に敬意を持つことで、
自然を破壊する行為を止めることができる
というメッセージが感じられます。
その理想的な存在が、
腐海や腐海に住む生き物の愛し、
虫や動物と心を通わせることができるナウシカなのでしょう。
6つ目:優しさは強さになる

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荒廃し混沌とした世界の中でも、
優しさを貫いているナウシカ。
勇ましく戦う姿も見せる一方で、
人、動物、虫、腐海などあらゆるものに対し愛情の深さを見せます。
そしてその愛情が次々と好循環を生んでいくのです。
相手を抑えつけようとする力の強さよりも
優しさのほうが強い武器になることを
伝えたかったのではないでしょうか。
7つ目:物事は複雑である

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本作はヒーローと悪者が戦うシンプルな話ではありません。
さまざまな正義や思惑がぶつかり合い、
そこに明確な答えはないのでしょう。
本作が伝えたいことは、
物事はいくつもの要因が絡み合い複雑なもの。
さまざまな角度から見て、
最善の策を見出すことが大事なのではないでしょうか。
・自然を恐れるだけでなく敬意を示すこと
・文明の進化の裏にある問題に目を向けること
このような見方をすることで、
より良い答えが見出せると
伝えたかったのではないでしょうか。














まとめ
今回は「風の谷のナウシカ」が伝えたいこと7つを見てきました。
・核兵器根絶
・反戦
・環境問題
・地球にとって有害なのは人間
・自然への敬意
・優しさは強さになる
・物事は複雑である
このようなメッセージを踏まえて鑑賞すると、
より深い解釈ができるでしょう。