「もののけ姫」のたたらばにはこどもがいません。
ジブリ作品なのにどうしてこどもがいないの?
と不思議に思う方は多いでしょう。
今回はこどもがいない理由について、
本作のパンフレットの中に書かれている
宮崎駿監督の言葉も参考に考察したいと思います。
ネタバレを含みますので、本編ご鑑賞後に記事をご覧ください。
「もののけ姫」たたらばにこどもがいない理由【考察】5つ
1つ目:普通の家族の概念がない場所だから

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
劇場用パンフレットの中で宮崎駿監督は、
たたらばに子供がいない理由についてこのように語っています。
男が守らなければいけない女とか
家族の中の女性というふうにしないで、わざと切り離した。
アシタカが行き着いた場所は、
たたらばという鉄を作る製鉄所のような場所です。
悲惨な境遇を経てたどりついたエボシが、
みずから開拓し、
・奴隷として売られた女性
・悪事を働いた者
・戦乱で家を失った者
・ハンセン病患者
このように居場所を失った人たちを受け入れています。
彼らは独立して生きていくことができる強い人々です。
監督が仰っているように、
・男(夫)に守られる女(妻)
・家庭の中での女性(母親)
このような当時の一般的な家族の概念を
超越した人たちと言えます。
普通の家族が集まってできた集落ではなく、
独立した人々の寄せ集めによる集落なので、
普通の家族の概念がないのでしょう。
だから、
・普通の家族
・こどもたち
という存在がないのだと思われます。
2つ目:発展途上の国だから

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
宮崎駿監督は劇場用パンフレットの中で
このようにも語っています。
本当はタタラ場には子供もいたんでしょうけど、
子供を入れるとややこしくなるから、入れなかった。
そのうち子供もいっぱい産まれてくるんでしょうけど、
今はまだそういう時期じゃないっていう状態のタタラ場にしておこうと思った。
エボシをリーダーにして、
寄せ集め集団によって組織された、たたらば。
宮崎監督が仰っているように、
そのうちこどもがいっぱい産まれ、
たくさんの家族が一緒に生活する
豊かで平和な環境になるのだと思われます。
しかし今はまだ作られたばかりの発展途上国。
経済的にも軍事的にも不安定な状況です。
子孫を増やして繫栄させようという状況には至っていません。
次の世代が誕生する段階ではないので、
子供の姿は一切見られないのでしょう。
夫婦たちが安心して子供を産める環境ではなかった

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
たたらばには夫婦関係の男女もいます。
しかし、
まだ子供を安心して育てられる環境ではないと判断し、
子供を作らないようにしていると考えるのが自然でしょう。
3つ目:緊迫感を維持したかったから

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
エボシが取り仕切るたたらばは、
砂鉄から鉄を取り出す作業を行う製鉄所のような場所です。
その砂鉄を取るために森林伐採をする彼らは、
山の神の怒りに触れています。
さらに
砂鉄が豊富なたたらばは、
他の村の侍から狙われる危険にもさらされていました。
劇中でアシタカがたたらばを
まるで城だな
というシーンがありますが
たたらばは、
いつ何者かに攻められてもおかしくない
戦国時代の城のような場所だったのでしょう。
たたらばの緊張感が見どころ

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
この常に緊迫状態にあるたたらばが、
本作の見どころでもあります。
しかしこの場所にこどもを登場させたら、
このせっかくの緊迫感は薄れてしまうでしょう。
これを懸念して、
こども不在の環境にしたのかもしれませんね。
宮崎監督はこどもがいない理由について
本当はタタラ場には子供もいたんでしょうけど、
子供を入れるとややこしくなるから、入れなかった。
と仰っています。
いつ戦場になってもおかしくない
たたらばの緊張感も保ちつつ、
無邪気なこどもたちを描くのは難しい
という演出上の問題があったことが考えられますね。
4つ目:エボシがこどもを望まなかったから

https://www.ghibli.jp/works/mononoke/
たたらばのリーダーとして、
売られた女性やハンセン病患者たちなど、
行き場を失くした人々を住まわせていたエボシ。
彼女は理想の国を作るために、
経済的な豊かさや軍事的な強さを強化しようと奮闘しています。
しかしまだ経済的にも軍事的にも不安定な途上国。
そのため、
エボシは子供を作ることを認めていなかった可能性があります。
弱者である子供に不安を感じていた?

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彼女はハンセン病患者に優しく接するなど、
弱者に寄り添う優しさがあります。
その優しさゆえに、
弱い存在のこどもをもつことに、
不安や恐怖を感じていたのかもしれませんね。
こどもを作ることで国を弱体化させることを懸念して、
国が安定するまでこどもは作らないことを
徹底していたのかもしれません。
5つ目:ハンセン病患者がいるから

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たたらばの別棟で生活している包帯を巻いた人々は、
ハンセン病患者とされています。
ハンセン病はとは、らい菌という菌に皮膚や神経が侵される感染症。
手足や顔の変形や、皮膚がただれるなどが主な症状。
現在は感染力が弱いことや、
遺伝病ではないことがわかっています。
しかし本作の舞台となっている室町時代の頃には、
業病として恐れられていました。
患者は差別され隔離生活を強制されていたそうです。
エボシはそんなハンセン病患者にも、
普通の人と同じように仕事を与え、
優しく接していました。
しかし、だからといって、
病気を恐れていなかったわけではありません。
だから他の人への感染を避けるために
ハンセン病患者は別棟に住まわせていたのです。
ハンセン病患者の隔離強化を懸念したから?

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このような状況で、
大人より免疫力の低い子供がいたら、
ハンセン病患者の隔離は、
もっと強化しなければならなかったかもしれません。
ハンセン病患者を受け入れること自体、
難しくなるかもしれませんね。
このような状況になるため、
敢えてこどもがいないという設定にしたことが考えられます。














まとめ
今回は「もののけ姫」のたたらばにこどもがいない理由について
考えてきました。
・普通の家族の概念がない場所だから
・発展途上の国だから
・緊迫感を維持したかったから
・エボシがこどもを望まなかったから
・ハンセン病患者がいるから
このような事情により、
敢えてこどもを描かなかったことが予想されます。
このような考察をもとに鑑賞すると、
また違った発見があるかもしれませんね。